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肥満外科のご紹介

Obesity surgery

肥満は世界規模の流行病ともいわれ、近年では全世界的な健康問題として認識されています。わが国においても、肥満の指標であるBody mass index (BMI) 25kg/㎡以上の肥満人口は年々増加しており、成人人口の約1/4が肥満に分類されます。
肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の誘因となり、動脈硬化を高率に引き起こすメタボリックシンドロームの基盤となります。肥満治療の基本は内科的治療ですが、高度の肥満症患者(BMI≧35kg/㎡)に対しては内科的治療か不成功に終わることが多いとされています。

当科では、内科的治療に無効の高度の肥満患者を対象として、2004年には内視鏡的胃内バルーン留置術、2005年には腹腔鏡下調節性胃バンディング術をわが国に初めて導入しました。また、2006年からは腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(図2)を開始し、2010年にはわが国で第1施設目となる先進医療の承認を受け、2014年からは腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除によるもの)として保険収載されました。2012年からは重症の肥満糖尿病患者を対象にして腹腔鏡下スリーブバイパス術も開始しております。

現在、保険収載された腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を中心に施行しており、腹腔鏡で観察しながら胃をバナナ状に細長く切除します。
腹腔鏡下手術は傷も小さく、術後の回復も早い手術法です。
いずれの外科的治療も食事量を減らす方法となるため、減量にはある程度の患者さんの理解と努力を必要とします。現在までにのべ170人以上の患者さんに施行しましたが、約半年間で7~30kgの減量が可能でした。それに伴い、肥満に伴う健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝など)も高率に改善しました。
上記に加えて何かご質問がありましたら氏名、年齢、身長、体重、肥満に伴う健康障害(有無と病名)、居住地、内科的減量治療歴(年)を明記の上、OITAMBS@oita-u.ac.jpにメールをお願いいたします。

【2022年3月1日現在】 肥満症に対する外科的治療施行症例数

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 184
腹腔鏡下調節性胃バンディング術 31
内視鏡的胃内バルーン留置術 25
腹腔鏡下スリーブバイパス術 5

肥満外科への質問

私は160cm、75kgの未婚の25歳の女性です。特別、高血圧や糖尿病などの病気はないのですが、内視鏡的胃内バルーン留置術や腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行ってもらえるでしょうか?
当科では、内科的治療に無効の高度の肥満症患者さんを対象に外科的治療を行って来ました。特に肥満に伴う健康障害(糖尿病、高血圧、など)の治療として行っており、美容目的には行っていません。
また肥満の程度もBMI[体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]≧35kg/㎡を適応としており、160cm、75kgではBMI<30 kg/㎡ですので治療の対象になりません。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険上の適応は、『6ヵ月以上の内科的治療によっても、十分な効果が得られないBMI≧35kg/㎡の患者であって、糖尿病、高血圧症又は脂質異常症のうち1つ以上を合併している患者』とされています。
腹腔鏡下肥満外科手術の費用と入院期間について教えてください。
内視鏡的胃内バルーン留置術と腹腔鏡下調節性胃バンディング術は全額自由診療で、実費負担となります。いずれの保険も利きません。
BMI≧35kg/㎡の肥満症患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は健康保険で認められています。また30≦BMI<35kg/㎡の中等度肥満症患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術や腹腔鏡下スリーブバイパス術は、臨床研究として行っております。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の費用は、入院期間によって大きく異なります。入院期間は術前減量や合併症の程度、術後合併症の有無によって大きく変動します。一般的な入院期間は、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術では10~14日間です。費用は所得によって変動しますが1月5~10万円程度です。
腹腔鏡下肥満外科手術の副作用について教えてください。
腹腔鏡下調節性胃バンディング術やスリーブ状胃切除術は全身麻酔で行う手術ですので、一般の手術に伴う肺炎、出血、肺梗塞などの生命に関わる合併症が起こることがあります。
また腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は安全性の高い手術法ですが(死亡率0.2%)、縫合不全1~2%、逆流性食道炎、通過障害などの合併症が起こります。
腹腔鏡下肥満外科手術の効果について教えてください。治療を受ければ好きに食べても体重が減りますか。
肥満症に対する外科的治療には、食べる量(摂食量)を制限する方法、消化吸収能力を落とす方法、およびそれら2つの方法を組み合わす方法があります。
消化吸収能力を落とす方法は減量効果が高く、好きなように食べても減量して行きます。しかし長期的にみれば、栄養吸収障害から、貧血、骨などの代謝障害を引き起こし、不健康な減量となります。それに対し摂食量を制限する方法では食べる量を減らす方法のため、代謝障害はあまりおこりませんが、減量にはある程度の患者さんの理解と努力を必要とします。
現在、当科で行っている治療法は主に摂食量を制限する方法ですので、患者さんには、食事は1日3回、食事はゆっくり食べ満腹になったらやめる、間食をしない、水分はノンカロリーのもののみ、などのルールを守ってもらうことで減量効果を表しています。
効果については、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術では過剰な体重(治療前体重-標準体重)の50~60%の減量が可能です。
腹腔鏡下肥満外科手施行前後の外来通院について教えてください。遠方からでも通院可能ですか?
当いずれの治療法も定期的な最低1ヵ月ごとの通院チェックを必要とします。通院の継続が困難であれば、治療法の効果が十分にでなかったり、逆に危険に曝されることになります。したがって月1回の通院可能な患者さんに治療を行っています。

肥満外科 臨床診療

肥満は世界規模の流行病ともいわれ、近年では、全世界的な健康問題として認識されています。わが国においても肥満の指標であるBody mass index (BMI) 25kg/㎡以上の肥満人口は年々増加しており、成人人口の約1/4が肥満に分類されます。
肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の誘因となり、動脈硬化を高率に引き起こすメ タボリックシンドロームの基盤となります。肥満治療の基本は内科的治療ですが、高度の肥満症患者(BMI≧35kg/㎡)に対しては不成功に終わることが多いとされています(図1)。

図1 世界における肥満外科手術の推移

当科では内科的治療に無効の高度の肥満患者を対象として、2004年には内視鏡的胃内バルーン留置術、2005年には腹腔鏡下調節性胃バンディング術をわが国に初めて導入しました。また2006年からは腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)を開始し、2010年にはわが国で第1施設目となる先進医療の承認を受け、2014年からは腹腔鏡下胃縮小術(スリーブ状切除)として保険収載されました。2012年からは重症の肥満糖尿病患者を対象にして腹腔鏡下スリーブバイパス術も開始しております(図2)。

図2 わが国における肥満外科手術の推移

当科では、LSGを中心に肥満外科手術を行っています。LSGは全身麻酔下に腹腔鏡で観察しながら、胃をバナナ状に細長く切除する手術方法です(図3)。腹腔鏡下手術は傷も小さく、術後の回復も早い手術法です。

図3 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

いずれの肥満症に対する外科的治療も食事の食べる量を減らす方法のため、減量にはある程度の患者さんの理解と努力を必要とします。現在までにのべ170人以上の患者さんに施行しましたが、約半年間で7~30kgの減量が可能でした。それに伴い、肥満に伴う健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝など)も高率に改善しました。
上記に加えて何かご質問がありましたら氏名、年齢、身長、体重、肥満に伴う健康障害(有無と病名)、居住地、内科的減量治療歴(年)を明記の上、bariat@oita-u.ac.jpにメールをお願いいたします。

肥満外科 基礎研究

当教室では2004年より肥満症に対する外科的治療として、内視鏡的胃内バルーン留置術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下スリーブバイパス術を導入してきました。 また当教室ではラットモデルを作成し、肥満外科手術の基礎研究も行ってきました(図1)。

図1. ラットのスリーブ状胃切除術と胃バンディング術

ラット胃バンディングモデルに内臓脂肪切除を併施した場合、 耐糖能異常に関して上乗せ効果は認めないことを明らかにしました(2)。また、胃バンディングモデルとスリーブ状胃切除モデルを用いて、スリーブ状胃切除術は胃バンディング術に比べ、糖尿病代謝に対して(3)、さらに脂質代謝の点でもより効果的であることを明らかにしました(4)。肥満外科手術の摂食中枢に与える影響についても検討しており、スリーブ状胃切除術は消化管ホルモンの変化を通して、摂食を抑制することが明らかになりました(5)(図2)。
現在、スリーブバイパス術の糖代謝や摂食中枢に対する効果について検討を行っています。

1. Endo Y, et al. Obes Surg. 2007;17:815-819.
2. Hirashita T, et al. Surgery. 2012;151:6-12.
3. Masuda T, et al. Obes Surg. 2011;21:1774-1780.
4. Kawano Y, et al. Obes Surg. 2013;23:1947-1956.
5. Kawasaki H, et al. Surg Today 2015;45:1560-1566.

図2. 視床下部におけるNPYの発現